サブプライム問題から発した金融不安、株価の暴落、そして大手証券会社リーマン・ブラザーズの倒産をはじめとするアメリカ経済の破綻により世界的規模の大恐慌さえ危惧されています。それはアメリカの市場万能型資本主義、とりわけカネがカネを呼ぶ、マネーゲーム化しているアメリカ経済とそのビジネスモデルが崩壊したことを如実に示すものです。
そうしたアメリカ経済に潜んでいた欺瞞性を的確に指摘し、それに決して追随することなく、新しい日本の成長戦略を明確に描き出した著書『21世紀の国富論』(平凡社)。世界的に活躍するベンチャーキャピタリストの原丈人さんが著したもので、時々雑誌などで目を通していたその考え方には共鳴することが多く、注目している方のお一人です。
今回の著書では、アメリカ経済の特徴でもあるROE(株主資本利益率)による経営について―「既にあるもの」の効率化を図ることはできても、「今はないが、将来つくるもの」の価値を最大化することはできない―と経済効率優先主義に警告。さらに人事面での考課や、業績やマーケティング、財務管理まで、あらゆる要素を数値化し、誰が見ても客観的に納得できるものを指標として使う、いわゆるビジネススクールの功罪についても指摘し、手段と目的の取り違えが現在の資本主義においては最大の欠点であることに大胆に言及されています。
産業革命以後、豊かなモノに溢れた生活を求めて走ってきた地球人、21世紀という新しい世紀は、そろそろ新しい価値基準に基づいた暮らしが必要なのではないかと思います。それに伴い私たちサービス業に携わるものも、サービス全般において一般的接客・接遇を超え、真のホスピタリティについて考え、食の意味、そしてリゾート本来のもつ、深くて、大きな文化的拡がりに目を向け、実践していくことが大切だとつくづく感じています。
今年開催された国際ホスピタリティ・ビジネス会議で、「文化資本とホスピタリティ」の基調講演の中で、株式会社資生堂名誉会長・福原義春さんは「よりよい物をよりやすく、より多く作ることがよしとされた時代が過ぎてしまい、それが不愉快とされる時代になってきた。そうなると、ホスピタリティは経済原理から脱却して、人間対人間を基本原理とするのではないか。経済はサービス経済からホスピタリティ経済にシフトしなければならない時代になってきたのではないか。ホスピタリティは、近代を超える知のキーワードになる」と示唆に富んだ発言をしておられました。
欧米で生まれたホスピタリティの概念が日本の土壌の中でどう融和し、どう普遍化するか、それを追究することに新しい可能性を感じるのです。つまり、人間の豊かな暮らしは、モノではなく、目に見えない心の価値に気付き、それを求めていくことが、私たち自身のために、またお客様のために大切なことではないでしょうか。
夜空の美しい季節、空を見上げ、月の満ち欠けや星の輝きにそっと身を委ねてみる......。古来人々が自然と対峙することなく、同化することによって愛でた思想と方法は、決して古くなく、新しささえ感じるのは私だけでしょうか。
ー初冬のおたより(私信)よりー
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