美しさとは人に教えられ、身に付くものではありません。何よりも自身でどのように磨くかを、常に考えなければならない。その対策に書物であれ、先人の教えであれ、あらゆるところに拡がっています。知りたい、学びたいが大切です。
これは私が尊敬してやまない経営者、資生堂名誉会長の福原義春氏の言葉です。福原さんの自伝的回想録『ぼくの複線人生』の中で、過ぎし方を振り返り、「会社から与えられた仕事を責任持ってやり遂げることは勿論のこと、それだけでは足りない。社会の中で人はどうあるべきか、人が生まれて来た以上、その使命は何であるのか。といったことを考えるようになった。そして人も会社も美しく生きるとは何なのかといったことを考えるようになった」さらに「ぼくが人間として成長するならば、必ずや会社の成長に反映することだろう」。
連日、マスコミを賑わす政財界の不祥事を見聞するにつけ、いかに日本人が目の前の利益ばかりにとらわれ、目を覆いたくなるほどのモラルハザードの危機感に陥っているかを感じざるを得ません。多くの企業の課題の中心はモラルにあり、またそのモラルは企業文化の中からしか解決できないことをよく認識していらっしゃる上でのご発言でしょう。
その言葉一つひとつに、「美」という企業文化を生み、育ててきた資生堂の歴史を感じさせ、文化に深く関わってきた資生堂と福原さんの美意識から学ぶことが多くありそう......。そのうえ福原さんは、『多元価値経営の時代』『企業文化のオピニオンリーダー福原義春語録』『文化資本の経営』や『生きることは学ぶこと』『猫と小石とディアギレフ』『福原義春 サクセスフルエイジング対談シリーズ』などの著作、エッセイ集、対談集を上梓、さらに自ら育てた蘭の原種をひとつひとつ写真に撮り、91年に『100の蘭』、そして今年の春には『101の蘭』という写真集を作り続けています。また、私たちの想像を超える忙しい中、ゴルフのお付き合いをお断りしていることに触れ、「その代わり、本を読むことができたんですよ、たくさんの本をね」と書いているほどの読書好きでもあります。
先月、活字離れに歯止めをかけ、日本語に対する理解を深めてもらうことを目的に設立された「文字・活字文化推進機構」の会長を務められることになりました。「日本を世界に冠たる活字に親しむ国に作り上げていきたい」と語った福原さんには、まさにうってうけの肩書きがひとつ増えたようです。
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